種をまこう!

日本には、いや、世界には、新しいフードシステムが必要だ。私たちと、私たちの子どもたちのために。

工業化された化学農場と保存料によって成り立つ現在のフードシステムは、私たちの体を蝕んでいる。ユネスコの報告によれば、環境汚染や工業化された化学薬品漬けのフードシステムにより、深刻な病気が30%増加しているという。もう時間はない。

土壌も水も汚染されている。私たちの遺伝子も汚染されている。私たちの未来も…。70年以上にわたるこのフードシステムによって、私たちの体や心も脆弱化している。フードシステムの再生が早急に求められている。

そのためには、私たちが本物の種、本物の食べもの、本物の未来をもう一度思い出す必要がある。

おばあちゃんがつくったお味噌汁の、あの温かい味わいを思い出してほしい。もし、その思い出がないのなら…あなたは大都市で生まれ育ったのかもしれない。歴史も、文化も、コミュニティもない。それが現在のフードシステムが生み出すものだから。食のリアリティからの乖離。幻想の命、幻想の文化。

本物の命は、本物の食べもの、本物の豊かさを知っている。本物の種と、その中にある本物の遺伝子が、本物の食べものをつくる。ワサビの小さな種に詰まっている、何千年分もの情報と物語が、本物の食の未来をつくる。

遺伝子は物語だ。日本には4種類の在来野菜がある。ワサビ、ふき、山芋、そしてもう一つ…。私の言うことを鵜呑みにせず、調べてみてほしい。

縄文人たちもワインを飲んでいた。ステンレスのタンクやオーク樽ではなく、土器で醸造されたワインを。そしてそれは、ヨーロッパの葡萄ではなく、山葡萄からつくられていた。

だから、本物の日本人の遺伝子には、ワインの物語が刻まれている。山から採れる本物の野生ワインの物語が。

これが遺伝子だ。食べものとは、何千年にもわたり、引き継がれてきた古い物語たち。私たちはこれを育て、次世代に受け継いでいく必要がある。これこそが、日本文化の資産。これこそが国であり、経済である。

今日、あなたは何を食べただろう?明日の食文化をよりよいものにするために、今日、私たちは何をどのように食べたらよいのだろう?

これが経済だ。北米先住民の言葉が、それを完璧に表現している。「白い顔をした悪魔たちが西へと進み、大地からあらゆるものを奪い去っていったことに対し、赤い顔をした先住民たちは、ただこう言った——『最後の木を伐り、最後の川を汚し、最後の魚を釣った時に初めて、あなたがたはお金は食べられないことに気づくだろう』」。
※フードシステム:食料品の生産・加工・流通・消費・廃棄までの一連の流れを一つの体系として捉える概念。フードチェーンとも言う。


謝辞:このページは、一般社団法人全国信用金庫協会のご厚意により、業界機関誌「Monthly信用金庫 2016年4月号」掲載の本稿を転載させていただきました。