種をまこう!

1ドルは1ドル、でしょう?

それなのになぜ、同じ1米ドルの価値が場所によって変わるのだろう? こちらのほうがあちらより需要があるから、信用があるから、価値があるから…

もちろん各国政府が与える影響はあるが、それよりも、ドルの内容と真価を決定するのはその中身だ。

種も同じ。種の中のDNAが本物の栄養素を育て、生命を引き継いでいく。在来種は開放受粉なので自然に多様性に富むが、F1種のDNAは多様化しないように、種子の生産ができないように、実験室で合成されている。

野菜の栄養比較研究で有名な元テキサス大学のデイビス教授は、F1種と在来種、それぞれ43種類の野菜の栄養価の違いを50年にわたり研究し続けた。その結果、在来種はF1種よりも最大で38%、栄養価が高いことが証明された。DNAの多様性は、食べものの栄養素にとって最も重要な要素だ。

もし、世界がモンサント社のF1トウモロコシや大豆など、人工的なF1種に独占されていたら、多様性は失われ、栄養素の生態系は崩壊するだろう。

米ドルについても、同じことが言える。

健康で栄養に満ちた世界経済を実現するために必要なのは多様性だ。金融システムにも、一つの種による独占ではなく、多様化が必要とされている。アドルフ・ヒトラーもローマ帝国、モンゴル帝国も、単一民族による支配の試みはいつも失敗に終わっている。DNAとは、多様性なのだ。

金を基軸としたインドネシアのディナールは、世界の金融の多様化にとって健全かつ安定した選択肢の一つとなるだろう。むしろ、破綻した米ドルシステムの良き友となるかもしれない。

なぜ、米国がイスラムによるテロを生み出したかを考えてみたことがあるだろうか?

…いや、話を戻そう。

日本円は世界的なポートフォリオにおいてはもっと主要な役割を果たしてよい通貨なのに、米ドルとの結び付きが強すぎてその真価を生み出すことができない。ユーロが値上がりし、国家の”レーダー”を上回ると、フランスの大手国際企業は倒産に追い込まれる。

このような金融“自然”災害はどうして起きるのだろう? 英国政府によって仕掛けられたアイルランドのジャガイモ飢饉や、米国政府が病原菌のついた毛布を配布したことによるネイティブ・アメリカンの天然痘流行を思い出してほしい。金融災害も同じパターンをたどっている。

本当の栄養素は、通貨の中のDNAにある。それは金が基軸なのか? 種が基軸なのか? または、コンピュータ上のゼロに過ぎないのか?

コンピュータ上のゼロは人工的で、合成されたF1種と同じ。栄養も実質もなく、単なる広告キャンペーンに過ぎない。

あなたの栄養素を取り戻してほしい。そのためには実質のある本物の食べものを買い、実質のある本物のお金を買うこと。そうすれば、私たちが何か買う度に、新しい世界を築くことができる。


謝辞:このページは、一般社団法人全国信用金庫協会のご厚意により、業界機関誌「Monthly信用金庫 2016年10月号」掲載の本稿を転載させていただきました。