種をまこう!

空気を所有するのは誰?雨を所有するのは誰?種子は?あなたのDNAは?アイデアは?

師はかつて、弟子たちに惜しみなく知識を伝授した。このように知識は受け継がれ、生き延びてきた。彼らはコミュニティのために生きた。命は増殖し、文化も増幅した。しかし最近、知識とともに文化も制限されている。

事業や個人が文化に何かを還元したり、文化を復興することは健全なこと。でも、文化を大学や法律や会社に閉じ込めれば、文化は制限され、死に絶え、一者による独占となる。

欧州、特にイギリスでは昔から、「コモンズ」という文化がある。村に連なる一続きの土地は村人全員の土地で、誰が使おうと自由。食べものを育てようと、家畜を放牧しようと自由な土地。それが「コモンズ」と呼ばれた。

20年前、ローレンス・レッシグはオープンソースのフリーソフトウエアを提唱し、伊藤穣一氏が日本にこれを紹介した。彼らはマイクロソフト社などによるソフト独占に異議を唱え、クリエイティブ・コモンズとして知られた。このオープンなソフトは誰でも利用でき、誰かが改善すれば改善版が再び公開され、誰もがそれを利用し、さらに改善できる。この試みは様々なソフトの利用性や創造性を増大させた。増大することは、生命のDNAの原理。

これはウィキペディアの原理でもある。そのデータベースは自由に利用でき、全員の利益のために全員が貢献する。一企業の収入のための情報ではない。一企業が行う「独占」は、管理し、制限し、減少させる。これは死の原理だ。

この60年間に、世界の種子の多様性は75%も減少した。種苗会社がF1/遺伝子組み換え種子を工業的に製造・販売し独占したためだ。彼らは今や価格決定、農業、食品、健康ビジネスまでも支配している。だからこそ、古い種や在来の自然な種は、子どもたちの食の安全な未来にとって不可欠だ。種子から食品業界に至るまで、私たちは古いDNAを持つ種子を探し求め、保存し、増やさなければならない。

最近、日本政府は、様々な種子の管理を政府下に置くよう法律を変えた。なぜか?これは“減退”の実例で、多様性を育てる措置ではない。種子の管理権限の「中央集権化」は、世界的に同じ。この法改正でモンサント社はJAを通じて日本のDNA(種子)をより支配しやすくなり、在来種を制限して大量生産のF1種をさらに普及させることができる。JAと日本政府がどの種を農家に与えるべきかを決めるのだ。こんなことをすべきかどうか、農家や日本国民は一度も意見を問われないまま政府は可決した。TPP交渉が放棄されてから数週間後のこと。これは農業、食物、種子の支配に関わる問題だ。

「多様性」こそが生命、植物、自然、食物を生かす!「制限」ではない。種子や私たちの食べもののDNAの未来を、多様にするものは何か?

それは種子のコモン・ライセンス。国、企業、個人はその種子のDNAを所有できず、所有権はコモンズに帰属する。このライセンスは、子どもたちのために新しい、安全な食の未来を創り出してくれるだろう。


謝辞:このページは、一般社団法人全国信用金庫協会のご厚意により、業界機関誌「Monthly信用金庫 2017年6月号」掲載の本稿を転載させていただきました。