種をまこう!

冬の間中、土壌は力を蓄えてきた。凝縮されたエネルギーは、葉となり蕾となり、新しい命として芽吹いていく。私たちはそれを「春」と呼び、中国では「新年」と言う。自然界のギブ&テイクは、同じ比重で行われる。失われるものはなく、ただ変容するだけ。

人間だけが、返すものよりも多くを取る。私たちは地球からあまりにも多くを取りすぎてしまった。水、空気、食べもの、土、木、空間。私たちは本当に1日3食も摂る必要があるのだろうか?この対価を支払うのは子どもたちだ。でも子どもたちに負担がかかる前に、どうしたら私たちがもっと多くを返すことができるか、考える必要がある。

その一つの方法が、お金がどこで生まれるのかを見ることだ。誰もが合法的にお金をつくり出すことができる。例えば、私があなたに対して利子10%でお金を貸すことにする。あなたがそれを受け入れ、10%の利子を付けて私にお金を返せば、私は利子分のお金をつくり出したことになる。

合法的な地域通貨システムが世界中で育ちつつある。なぜだろうか?それは、グローバルな金融制度が地域から奪ってしまったものを、地域経済が力を付けて元に戻していく必要があるからだ。

地域通貨システムは地域で循環する。地域で生産されたものを購入し、地域の職人を支える。税金も地域にとどまらせる。地域通貨はより温かく、日々、より多くを返す。地域通貨があるということは、選択肢があるということ。地域通貨システムを使うか、国の通貨システムを使うか、または自分の通貨システムを始めるか。

物々交換を覚えているだろうか?日本の地方では今も日常的に物々交換が行われている。私が友人に野菜をあげ、彼は私に魚をくれる。隣人が私を車でまちまで買いものに連れて行ってくれる代わりに、私は彼女の庭の草取りをする。これが本当の豊かさであり、未来を築く経済だ。

貨幣とは、私たちが共に生きる未来への信用、信頼の象徴であるべきだが、それが今や生きる意味に貶められ、友情よりも高い価値を置かれている。生きる意味とは、返すこと。私は私にできる最善の方法で返すことで、隣人の庭を手入れする。私たちは座ってお茶を飲んでおしゃべりをして、共に生きる。

東京・中目黒の地域通貨は、イギリス、アメリカ、フランスの地域通貨システムと同じくらい法的効力がある。イギリスの小さなまちでは、貯金通帳の表紙にデビット・ボウイを印刷している。なぜ?それは彼が女王や地域の英雄よりもかっこいいから!

さて、新年度。新しい行動は、新しい様々な方向に、新しい人生を育てていく。今年は、私たちがどうしたら、より多くを返すことができるか考えてみよう。子どもたちが、その負荷を負わされる前に。


謝辞:このページは、一般社団法人全国信用金庫協会のご厚意により、業界機関誌「Monthly信用金庫 2017年4月号」掲載の本稿を転載させていただきました。