種をまこう!

あなたの銀行預金がどこに投資されているかをご存じだろうか?月給が振り込まれると、あなたの預金や、クレジットカードなどの支払いはすべて、金融機関を通して「地球の未来」を育てるためにどこかに使われている。果たして、それはどんな未来だろう?

銀行や貸金業者は顧客に利息を課し、さらに顧客の預金を使って世界中で最高のマージンを得られる投資先に投資する。したがって彼らは少なくとも2回、マージンを得る。でもその利益が顧客に還元されることはない。お金を置く場所は、回り回ってあなたの日々の生活を育てている。日々口にする食べ物、子どもが通う学校、散歩で通る道、ランチを食べる公園…毎日の私たちの暮らしを。給与が口座に振り込まれると、それは時には即座に投資に使われ、銀行の利益を生み出し、私たちの明日を育てる。

あなたの金融機関は原子力発電所の増設に投資していないか?化学肥料ビジネスや子どものDNA実験には?あなたのお金はどこに使われているのだろうか?「倫理的投資」は多くの場合、CSRやPRのためだけに行われる。お金の行く先を調べるためには、かなり注意深く物事を見る必要がある。

ここに日本の新しいサービスを一つご紹介しよう。「My Bank My Future」は各銀行の投資先を調査し、調査結果を公開することで利用者へ判断材料を提供している。キーワード「オープン(公開)」。これは新しい組織だ。

最近公表された調査では、メガバンクはパリ協定*以降も最も炭素排出量が多い石炭産業への融資を増加させていたことが判明した。またこれらの銀行は、500以上の先住民部族が建設を反対したダコタ・アクセス・石油パイプラインなど問題のある事業にも融資している。My Bank My Futureでは、気候変動の危機を回避するため、パリ協定に整合した投資・融資を行うことを銀行に求める署名を集めると同時に、化石燃料ビジネスや原子力ビジネスに資金提供を行っていない「地球にやさしい」銀行45社を紹介している。

私はフランスで何年も農業をしていた経験があるが、フランスの農家たちはお金を金の延べ棒に換えて屋根裏に隠し持っていた。彼らは決して金融機関の投資先を信用しなかった。そろそろ私たちにも、自分のお金がどんな未来を「買って」いるのか、調査すべき時期が来ているかもしれない。

私が住む高知の小さな村では、全ての家に翌年の種を保管する鍵付きの部屋がある。彼らは800年以上にわたりそうしてきた。種は本物の未来、本物の食べ物を育てる。一粒の小麦は6カ月間で20粒の種を育てる。本物の土壌、本物の田園。それこそが本物の未来を育てる投資だ。金融機関にあなたの預金の使い道を聞いてみてはいかがだろうか?

*2015年に採択されたパリ協定で、気候変動の危機を回避するために、気温の上昇を1.5~2度未満に抑えることを世界が合意した。


謝辞:このページは、一般社団法人全国信用金庫協会のご厚意により、業界機関誌「Monthly信用金庫 2018年6月号」掲載の本稿を転載させていただきました。