このコラムを通して、経済の現在や未来をさまざまな角度から見るのは楽しい作業だった。
かつて日本の通貨は「コメ」であり、円やドルなどコンピューター上の数字ではなかった。「コメ」はポジティブなシステム。一粒のコメは何百粒にも増え、より豊かな未来を創る。種は素晴らしい交換ツールだ。今、私たちが利用しているのはネガティブなシステム。今日1円を借りたら、明日には2%あるいは30%の利子を支払わなければならない。これは未来から価値を盗むこと。今、私たちが謳歌している経済的ライフスタイルのツケを払うのは、私たちの子どもたちだ。
では、今という時代に最も適した価値交換ツールは何だろう?現行の金や紙による貨幣制度はすでに時代遅れだ。次の時代にふさわしいものは?
私は昨年、日本バリュー・エンジニアリング協会の全国大会に招かれ、特別講演を行った。去年はリコーのような、システムや工程、商品の新しい価値を生み出した日本のバリュー・エンジニアリング企業の50周年記念にもあたり、議論のテーマは「これから先50年の価値交換はどうなるか?」だった。どうしたら世界の経済や証券業界の破綻を救えるのか?新しい戦争を始める?東芝、電通などの日本企業も何年も赤字が続いている。ギリシャやアイスランドといった国々も、何十年にもわたる深刻な赤字だ。大人数の労力によって少数を支えるピラミッドシステムの時代は終わった。10%対90%というこれまでの構造は、その90%がもう受け入れられない。
世界中で、ビットコインやブロックチェーンといったオープン・トレーサビリティシステムが価値交換のあり方に革命を起こしている。これらは投資の流れをオープン・ソース化するもので、お金が価値の本源に直接入る。かかるコストは地域の電気代だけ。価値を創造する個人の倫理的信用だけが価値の基準となる。経済がグローバル化する前はそれが当たり前だったが、証券取引が地域の責任を奪い去ってしまった。日本も昔は、個人の信用を前提とする紳士協定で成り立っていた。
ICO(Initial Coin Offering/仮想通貨における資金調達手法)という言葉を聞いたことがあるだろうか?IPO(Initial Public Offering=新規株式公開)ではなく。投資は価値管理において、すでに時代遅れの言葉となった。「コインテレグラフ」を聞いたことがあるだろうか?
よく見てほしい、お金の未来を。そして新しい価値交換における金融機関の役割を想像し直してみよう。それは、誰にでも開かれた大人数を支えるシステムだろうか?図書館や神社が地域を支えるように。生命は交換の上に成り立っている。自然界には一方通行はない。蜂は花から蜜をもらうが、お返しに花粉とタンパク質を運ぶ。この双方向の交換が、種や次世代の価値や生命を生み出す。根、土、虫、動物、天候、植物、宇宙、DNA、バクテリア、みんな同じ。双方向の、本物の生命に根差した生命こそ、私たちに必要なものだ。
想像力を駆使し、子どもたちのためにより良い明日を創り出そう。過去の、使い古されたシステムに固執する罠にははまらないように。「地球」という私たちの家を養い育て、子どもたちにより良い未来を創りたいのなら、私たちは前を向き、先に進まねばならない。
皆さん、またすぐに庭でお会いしましょう!
「John’s Column 種をまこう!」の連載は今回で最終回となりしました。ご愛読をありがとうございました。
- vol.0 地域社会の持続的発展に向けて
- vol.1 悪いのはお金ではない。私たちだ!
- vol.2 山のように考え、葉っぱのように生きよう。
- vol.3 贈り物をする日
- vol.4 3つのホログラム
- vol.5 私たちはなぜ服を買うのだろう?
- vol.6 金融機関はどうしたら図書館になれるか?
- vol.7 鯖街道
- vol.8 お金
- vol.9 生誕説を見直そう
- vol.10 銀行をつくろう
- vol.11 遺産とは
- vol.12 ご先祖様は見ている
- vol.13 収穫
- vol.14 愛か?お金か?
- vol.15 明けましてオメデトウ?
- vol.16 明日の経済を育てる
- vol.17 梅雨と月の螺旋(スパイラル)
- vol.18 事業コスト?
- vol.19 通貨の栄養素
- vol.20 選挙!!
- vol.21 愛と平和?
- vol.22 スプリング・マネー 
- vol.23 コモンズ
- vol.24 感謝
- vol.25 ECO-nomy 取った分より多く返す!
- vol.26 ポスト経済成長?ローカライゼーション!
- vol.27 地域でシェアするエコノミー
- vol.28 物々交換は過去のもの?
- vol.29 未来を育てるお金
-
vol.30 [最終回] そして日は暮れる